2023年11月5日日曜日

「ああっ!しまった!」の裏側にある意識

 

 


  ああっ!しまった!人間だれしも日々失敗をします。焦りやうっかりによるミスから、昔はこんなミスはしなかったのになぁというものまで多彩です。そして何歳になってもミスは恥ずかしいし、できればみんなには知られたくないなぁというのも人間の心理でしょう。

   過失なのか、故意なのか。どちらにしても知られたくないことに変わりはないでしょうけど、その裏側にある意識は正反対です。過失ならば恥ずかしいからというのが動機でしょうが、故意ならばそれは他人を騙すためのウソか、知られたら困るからという事になります。政治資金規正法違反者は毎回うっかりだと主張しますが、全部が全部うっかり過失したという気もしません。過去には自衛隊日報改ざん問題というのもありました。自衛隊に「駆けつけ警護任務」が課されるということで、ジャーナリストが海外派遣部隊の日報開示請求をしたところ、廃棄したので存在せず開示が出来ないと回答された問題です。

   その日報には「戦闘」という言葉が散見されたので、「自衛隊は非戦闘地域に派遣しているので憲法に抵触しない」という前提に疑義が生じる恐れから、防衛省は隠ぺいを図ったのでは?と疑われました。この件は防衛大臣が本当にないのか探すように指示したにもかかわらず、組織として最後までシラを切った印象(実際、後に見つかりました)があります。バレたら今後の組織運営が面倒になるからなのか、国民の代表である大臣を軽視しているからなのかは分かりません。しかし組織というものは巨大になればなるほど内向的になるという事実は否めません。自己都合を最優先して他者の事は二の次、自分たちの延命のためには部外者(あるいはトカゲの尻尾)には死んでいただくという姿勢です。

   巨大組織や巨大企業にメスを入れられない政治的指導力の欠如も問題です。自分だけ良ければよいを放置したら全体の利益は損なわれます。そうならないように規制(ルール)があるわけですが、なぜか今の政治家は規制緩和一直線です。その結果、非正規雇用や外国人労働者が増え、経済も安全も技術もボロボロになっていったのがこの20年だと思います。自分たちの儲けのためには部外者(あるいはトカゲの尻尾)には死んでいただくという姿勢です。

   先日こんな事故が起こりました。東電の福島第一原発の汚染水処理施設で、配管洗浄作業をしていた作業員が廃液を浴びてしまったというものです。当初の東電の発表では、一次下請け業者が行った洗浄作業中に配管が外れ100mlの廃液が飛散したということでした。しかし実際には、作業していたのは三次下請け業者であり、飛散した廃液は数リットルだったのです。パシャではなくバッシャーンです。家族で鍋を囲んでいる時にうっかりポン酢の器を落としたのと、オヤジが怒って鍋をひっくり返したくらいの違いです。大惨事じゃないですか。

   しかも事故時は現場管理者が不在であり、作業員は防護服やマスクは着用していたが防水のカッパは着ておらず、そのため廃液が皮膚まで届いてしまったそうです。現場で水洗いなどの除染はしたものの放射能量が基準値を下回らず、最終的には医大に搬送され入院になりました。基準値以下になるまで9時間!かかったそうです。

   東電は当初は飛散した廃液の全体量が分からず、把握した分だけを発表したといいます。処理水の海洋放出を巡り、中国政府に「東電発表のデータは信用できない」と言われ日本の海産物の輸入を停止されたことは記憶に新しいですが、こうしたことを言われないために慎重に対応すべきだったのではないでしょうか?管理者不在の現場で三次下請け業者に任せていたので情報収集が不正確だったのか、過失があったのか、あるいは故意に発表したのか真相は分かりません。

しかしこの事故、私には今の日本社会にはびこるルール無視・規制緩和が招いたもののように思えます。コストカットにより利益を生み出すやり方のなれの果てです。儲ける為に安全や教育を疎かにしたら本来は長続きしないはずです。しているならどこかに犠牲とひずみがあり、そしてそれはいつか限界を迎えてしまいます。その時にダメージを被るのはいつも個人です。今回の事故、自社の社員で作業し正しく管理者を置いていれば防げたかもしれないし、少なくとも故意でない限りは発表が二転三転する事態は避けられたでしょう。

   「現在、作業員は退院し体調不良や外傷はありません」

   この発表が二転三転しないことを願います。


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