いま私が貸してもらっている家には車2台分ほどの裏庭があります。去年の夏、初めて見学に行った時は、裏庭への扉を開けたところから文字通り一歩も踏み込めない密林でした。まさに植物の壁状態で、光すら遮る密度で繁茂する竹のような背の高い植物の密生に、私は自然の猛威を感じました。環境を破壊して開発する人間ですが、ひとたび管理保全を止めてしまえば植物の生命力は人の営みなど途端に飲み込む力強さがあると感じます。
当時、特に庭が必要な暮らしをしていなかった私は、庭は無いものとして暮らそうと思っていました。しかし、引っ越し前のある日、家の前を通りかかると玄関がワイドオープンしていて人の気配があります。思わず中に入ると高齢の職人がひとり、額に汗して作業をしていました。そして室内が見学時より圧倒的に明るい!!
なんと大家さんが配慮してくれて、密林の伐採を近くに住む職人に依頼してくれていたのです。連日猛暑となった昨年8月に、後期高齢者まであとわずかという職人がたったひとりで45リットルのゴミ袋70袋分の密林を更地にしてくれました。職人は日本共産党とは関わりがない方だと思いますが、その姿は日本共産党名物の真面目な高齢者そのもので後光がさしておりました。
本当に草の根ひとつ残さない仕事ぶりで、裏庭から緑色という要素が根絶されました。そして、サプライズというのか、長く樹海の中にあった石灯籠付きの日本庭園が姿を現し私を感動させました。秋に月見がしたくなる雅な庭です。
しかし、大変残念なことに月見の季節の終わりと共に突然その職人さんがこの世を去りました。うちの日本庭園を復活させたのが最後の仕事となったようです。私は一期一会の縁を噛みしめて日々庭を眺めていましたが、統一地方選も終わった4月中頃になり見逃せない変化が現れました。
再びあの「竹」が生えてきたのです。あっという間にあちこちから。なぜか巨大な葉を持つ南米の植物みたいなのも「コモ エスタス?」(元気ですか)と現れました。職人の成果を管理保全しなくては!と狼狽した私は除草剤を撒きました。しかし全く効かないどころか、日本共産党のご婦人に『除草剤は土を殺すからダメ!草むしりしてプチトマト植えなさい。美味しいから!』と怒られる始末。
私は額に汗して「竹」をむしりました。竹にしては意外なほど柔らかい素直なやつでした。「南米」もむしりました。気になった私は彼らの正体を探りました。その結果、南米はいまだ不明ながら、「竹」の正体は掴むことができました。
彼の名は【トクサ】 思えば雅な日本庭園の傍らで見たような気がします。注意書きに「覚悟をもって植えなければならない」とありました。
「百聞は一見に如かず」、「経験に勝る勉強は無い」・・・
、いろいろな言葉が浮かびます。今後の管理保全を考えてプチトマトの揺れる日本庭園にするのか、センスが問われることになりそうです。