2500億円、みなさんはこの数字を聞いて高いと思いますか?安いと思いますか?個人の家の建設費だと言われれば高いと感じますし、国家予算だと言われれば安いと思うかもしれません。しかし、どちらにしても大変な高額であることは間違いありません。
2020年の試験1号機打ち上げ予定から延期すること3年、先月の打ち上げ中止を経て迎えた7日、日本の次期主力ロケットH3が空に散りました。昨年のイプシロン6号機に続き、地上からの【指令破壊信号】による消失です。搭載されていた開発費379億円の先進光学衛星だいち3号も運命を共にし、H3の開発費2061億円と合わせて約2500億円の大花火です。
私が担当者だったなら、しばらく部屋の隅で体操座りの日々でしょう。『やっちまった・・』との意識が紛れるのはいつの事でしょうか。想像もできません。
先月17日の打ち上げ中止は、地上設備とロケットとの通信・電源ラインを切り離した時に発生した電気ノイズが原因でメインエンジン点火がされなかったそうです。今回はその対策をして臨み、第1エンジンは無事に点火、しかし、上昇中に第2エンジンに点火できず推力喪失、無念の空中爆散となったようです。
H3は初めて民間企業が主体的に参加したロケットで、商業的な成功を収めるために国際競争力に主眼を置き、コスト削減を徹底的に行った機体と言えると思います。エンジンパワーアップ・コストダウン・信頼性維持、この相反する要求を詰め込んだ答えが今日の大花火です。
この20年、日本は同じ種類の失敗を続けてはいないでしょうか?会社でコストと言えば真っ先にあがるのが人件費です。会社のパワーアップ・コストダウン・信頼性維持、この相反する要求を詰め込んだ結果、人が犠牲になっています。ブラック企業を持ち出すまでもなく、公務員ですら人をコストと考え雑に扱う習慣が当たり前になりました。昭和の時代の会社は人材は宝だと考えていました。地域貢献の意識も高かったと思います。
しかし、2000年代初頭の自民党小泉政権の頃から日本は変わってしまいました。労働者は使い捨て、教育・社会保障は削減、まるで国内を見捨てたかのような国際競争力至上主義の政策の数々・・・。失ったものの代わりに私たちは何を手に入れたのでしょうか?しまいには『トリクルダウンは起こるとは思っていなかった』とまで言い放たれ、ちょっと割と真剣にめまいがします。
予定の軌道まで到達できなかったH3と、日本社会が辿っている軌道が重ならないようにしなければいけません。そのためには、社会問題の根底にある共通の原因を政治が解消していくしかありません。